望月は、東条京介のことは留年した昨年、
同じ組だったから良く知っている。
そう、京介の意識に無かっただけなのだ。
二年生で補導もされたから仕方が無かったが…
しかしそのクラスに東条がいた。
二時間目が終わると堂々と弁当を広げ、
遅くても午前中には消えていた。
まさに風のように…
誰とも友達、どころか話もせずにマイペースだった。
一度仲間に誘ったが、
まるで邪魔だと言わんばかりに、
冷たい眼差しを投げかけられ、
そのまま通り過ごして行ってしまった。
完全に無視だ。
だからこっちも無視して一年を過ごした。
が、何となく気になる存在、
姿が見えれば目が行っていた。
自分たちだけではなく、
他のやつらにも完全無視の態度だ。
そんな東条が何故増田を。
望月でなくても気になることだ。
それにこの言葉使い…
俺たちより迫力がある。
医者の息子と言う話ではなかったのか。
京介が担任に、
卒業の条件として東大受験を言われた事は、
こんな不良グループの耳にまで入っていた。
そして家庭環境も…
廊下などで高木と話せば、
誰かには聞かれていた。
別に隠す事でもない、と普通の声で話していたからだ。
そして今、望月は
いきなり自分たちの前に現われた京介を、
そんな事を思いながら見ている。
とにかく、こんなに乱暴な奴だとは思わなかった。

