「お前… 学校では無口で通しているらしいが、
アレは演技か。
怪しい奴だな。
増田がどこに行こうがお前の知ったことか。
邪魔だ、どけ。」
そう言いながら望月が、
京介を突き飛ばすような格好で、
腕を前に出した時だった。
大柄な望月、
いつもならそれだけで相手を付き飛ばし
萎縮さすのに十分だった。
が、今日の相手はいつもとはちょっと違う。
望月は出した腕を捕まれてねじ伏せられ、
驚いている間に
腹に一撃を食らい路上にうずくまっている。
一瞬のことだった。
「望月さん… この野郎。よくも… 」
と、四人の中の三人が隠し持っていた
刃渡り10㎝ほどのナイフを手にして
京介を取り囲んだ。
しかし相手が悪かった。
普通の奴ならナイフを見るだけでひるむと言うのに、
ひるむどころか向かって来て、
自分たちのほうがナイフを払い落とされ、
鋭いパンチや足蹴に襲われている。
「東条… お前… 」
地面にへたばりながら望月が、
顔をゆがめて苦しそうな声を出している。
「分ったか。俺は増田に用がある。
あいつの居場所を素直に言え。」
京介は同じように地面に座り、
望月をその鋭くなった眼差しで睨んでいる。
こういう相手には
どちらが優位かを見せ付けると目的が達し易い。
喧嘩慣れしている京介の持論だ。

