天使と野獣


自分のすることは初めから決っていた。

それだけで今に至っているのだから、

何を言われても、
知らぬものは知らぬ、
それしかなかった。



「その不良のボスではなくて
子分の増田と言う奴が二人に接触していたのだな。

そいつが隣のクラスにいるのだな。
よし、どいつか教えろ。」



不良の仲間なら
吉岡の顔面を殴ってもおかしくは無い。

そうか、その望月という不良グループが
この学校でチーズを販売していたのか。


望月は目立つ奴らしいから子分が捌いていたのだろう。

それであの二人に接触したのが増田という奴だ。


その時、京介はそう推理した。

そう、名探偵・東条京介のチーズがらみのストーリーは出来た。




直道が教室へ戻ると、

京介はそのまま廊下に立ち、
増田大吾を観察している。


増田大吾… 高橋直道と同じような背格好だが、
ずる賢そうな狐目が特長だ。

ボタンをはずした学生服から
真っ赤なTシャツがのぞき、
派手なシルバーのペンダントが目立っている。

ピアスホールがあると言う事は、
学校を出れば何がしかのピアスをしているのだろう。


そしてTシャツは黄色だが、

同じような格好をした同級生と
なにやら笑いながら話をしている。

あいつも不良の子分だろう、と思いながら

京介は廊下の壁にもたれ見ている。