しかし、一度に多量と言っても…
二人共が示し合わせたように死ぬものなのか。
わからないなあ…
後で死因を聞けば良い。
昨夜、平たく言えば、
チーズの密売現場を目撃した京介は、
とっさに頭に浮かんだ事を推測している。
しかし、どうもしっくり来ない。
じゃあ、今出来る事は…
と作動中の思考回路の向きを少し変えた。
そしてチャイムが鳴り、
二階へ行きたいが、
自分を無視して考え込んでいる京介の態度も気になり、
何となくその場に立ち尽くしている直道。
やっとの事で京介は直道の顔を見た。
「直道、お前のクラスとは限らず、
あの二人が誰かと人目を忍ぶようにして会っていたところを
見たことが無いか、皆に聞いてくれ。
俺が見たところ、あの二人は気の小さい軟弱な奴だ。
そう言う二人とは似つかわしくない奴と
会って話していたところを見たことが無いか。
その相手を知りたい。」
「分りました。でも…
京介さんは何故そんな事を。
吉岡の事だって外岡たちの事だって、
京介さんには全く関係ないことでしょう。」
三人の死に隠されている真相を何も知らない直道は、
昨日一応京介から動機は聞いたものの、
やはり素直には信じられない。
それで心に貯まっていた疑問を再度京介にぶつけた。
東条京介を5年近く見ていた。
自分たちの存在など全く無視、
自分の相手になる上級者だけを見ていたようだったが、
その様子も… 名前を覚えて親しく話す、
と言う事は一度もなかった。
話など、相馬先生ぐらいしか
しないのが東条京介のはずだった。
ここに来て、やっと自分の名前は覚えてくれたが…
こんな事は絶対に東条京介の行動には無い事だ。

