あいつらがチーズの売人か。

京介は外岡たちを捕まえて事情を聞こうと思っていたが、
急に気が変わった。

外岡や桜本ならいつでも会える。
家も知っている。

あいつらは脅しに弱いタイプだから明日にでも呼び出して… 

そう思った京介はターゲットを変えたのだ。



三人は何気ない素振りで歩き始め、
大回りをして青山通りの方へ向かっている。

ターゲットには気配を殺して追跡している京介だったが、

その清楚な美貌がたたり、

道行く女性たちの何人かに声をかけられ、
挙句には誘われたりした。


初めは無視していたが、あまりにもうるさく感じ、

思わず睨みつけていたその瞬間だった。


30メートルほど離れていたのが災いしたのか、
三人の姿が忽然と消えてしまった。


多分どこかの店に入ったのだろうが… 

男たちが消えた辺りの店と言えば宝石店、洋装店、エステサロン、
それに中華料理店だ。


京介は一軒ずつ中を覗いて見たが男たちの姿は見えなかった。

あんな男たちが宝石店や洋装店、
それにエステサロンに入れば余計に目立つはずだ。

だとすれば、可能性のあるのはあの中華料理店。


外から見ただけでは分らない。

京介は中に入ってラーメンを注文した。


なるべく全体がうかがえる席に座り、

神経を集中させて厨房の気配をも感じ取ろうとしていた。


しかし、いくら研ぎ澄まされた神経の持ち主だと自負していても、
中華料理店の雑音には勝てない。

無理か… と諦めた頃に、注文したラーメンが運ばれて来た。



「おまちどうさま。」



そう言って運んで来た店員の顔を見た京介、

いきなり胸に飼っていた小鳥がパタパタと羽ばたいた。