そして京介が刑事よろしく張り込みをして一時間。


案の定、まず桜本が姿を現し、続いて外岡が、

二人とも同じような布製のバッグを肩にかけ、
両手をポケットに突っ込み、寒そうな顔をしている。

が、二人はすぐに不審な動きをした。


二人の通う塾は出版社の建ち並ぶ一角のはずだったが… 

二人は地下鉄に乗り原宿方面へと向かっている。


やっぱり俺の勘は的中だ、
京介は気を引き締めて後を付けている。



二人は原宿の通りをキョロキョロしながら歩いている。

誰かを探しているようだ。

そして、しばらくすると三人の男が二人を取り囲んだ。


三人とも暴力団の下っ端、チンピラのような風采だ。

五人はそのまま、人で込み合う通りを避けて
汚れた感じのスナック横の路地に入り込んだ。

何を話しているのか。

二人は泣きそうなほど真剣な顔をして、
中の一人、大柄で顔から首筋にかけて
切り傷の痕がくっきりと残っている男を見上げて話している。

するといきなり他の二人が桜本たちのむなぐらを掴み、
腹の辺りを拳で殴った。


京介の目には大したパンチとは思えなかったが、

桜本たちは悲痛な顔をして両手で腹を押さえている。


まあ、喧嘩に縁がない生活をしている者にとっては
それだけでも大層な恐怖なのだろう。


それから大柄な男は、
自分のポケットから無造作に何かを出し、
そのまま外岡のポケットにねじ込んだ。


すると桜本が慌てて財布を取り出し、
やはり、ゆっくりと確認せずに、
男のポケットに紙幣を入れた。


そして二人は走るようにしてその場を離れた。