それで、父と子の間に隠し事は無い、
を心情に暮している京介は素直に話した。
栄は別に叱る事はしなかったが、お前にはまだ早い、と言われた。
それだけだった。
それでも性に目覚めた男子の欲求は一直線なもの、
小遣いが手に入った時にまた渋谷へ行った。
しかし、人の心を操る事の上手いさくらさんにも同じような事を言われ、
嫌われたくないと言う幼心も顔を出し、
しばらくは、たまに会う友達になろうと言う事になって中学時代は終わった。
そして、東条一家は、
京介が高校に入るのを機に大田区から文京区に移った。
しばらくしてさくらさんも銀座に店を出し、
千代田区のマンションに住むようになった。
それ以来、二人は頻繁に会うようになった。
そう、毎日では無いが、こうして京介が学校を抜け出して
さくらさんのマンションに押し掛けているのだ。
もっとも、さくらさんは大人の判断をする人、
会っていても、すぐセックスに入る事は無かった。
たまには男と女の関りもするが… ほとんどが、
第三者が見れば、歳の離れた姉と弟の睦ましい光景でしかない。
今も京介は、さくらさんのベッドルームに入り込み、
誘おうとしたが上手く避けられ、
こうして会話をする羽目になっている。
しばらく話をして、さくらさんが美容室へ行くのを見送って
帰るのが、京介の千代田区コースだ。
さくらさんの気持を確認したことはないが、
京介は、さくらさんの男で、用心棒のつもりだ。
「今年はお父さん、卒業式に出られて… 良かったわね。」
「ああ、近いから… 絶対に出る、と言っている。
そのために大田区から引越ししたようなものだからな。」

