天使と野獣


「あの、何か。」



その時の京介は、清楚な美貌に、

どこか壊れかかっているようで危なっかしくて見ていられない、

そんなタイプの少年のイメージを出していた。


整った容貌だが、
タレントにありがちな媚などは微塵も無く、

つい手を差し伸べたい、と感じる要素を漂わせていた。


いつの間にか、他の部署にいた販売スタッフや
エステシャンたちに囲まれた京介、

思わず身構え、その輝きのある鋭い眼光で女性たちを睨みつけ、

唇もぎゅっと結んだ。


そうすると、京介には全く分らない事だが、

不思議なほど男の匂いを漂わせる。


まさに今、現在は少年でも、
わずかでも目を離そうとするものなら,
たちどころに青年に変化してしまう。


そんな想像もつかないような可能性のオーラを放出している。


とにかく店の女性スタッフたちは、
可愛い男の子が来た、

という事で集っているだけだったが、

京介にとっては未知の世界、


まさに悪霊に取り囲まれたような気分だった。



「さくらさん、いるだろ。早く出て来てくれ。」



その時取った京介の行動がこれだった。



上品なエステサロンの店先で
いきなり大きな声でさくらを呼んだ。

力で女を蹴散らすわけにも行かず、

無意識に緊張した京介が、
ガラス張りの室内を震えさすような大きな声を出している。


店の女性スタッフたちはその行為、
声の大きさに驚き、

カウンターに隠れるように座り込んだ人もいたが… 


その内にくすくすと含み笑いさえ起こって来た。