天使と野獣


京介は剣道も空手もそうだが
個人プレーが得意だ。

団体プレーはどうも調子が狂って面白くない。


言えば、協調性に欠ける。


スキーは、中学一年で基礎から習ったお陰で今は上級者並。

滑り出せば楽しくてたまらず、
つい、人のいない方へと行ってしまうが、

好きなスポーツのひとつだ。


とにかく、この親子にとっては楽しみな家族行事だ。



「北海道へ行こうよ。
寒い時はとことん寒い場所こそ風情が出る。

父さん、北海道へ行ったことある。」


「ああ、夏に一度学会があって行ったが札幌だけだ。
まあ、冬場はスキー場の辺りは一面に雪化粧、きれいだろうなあ。

魚介類が抱負だし温泉も多い、
二人にとってはちょうどいいな。」



と、二人は冬休みの計画を立てて楽しんでいる。


ちまたでは一か月前からクリスマス商戦真っ只中だ。





翌日、学校を抜け出した京介は、

そのクリスマス気分にぎわう銀座に来ていた。


学生服のまま、まだ授業中の時間帯と言うのに、

空の弁当箱が入った鞄を持ってブラブラと歩いている。


行き先は決っていた。


そう、さくらがいるはずのエステサロンだ。

が、受付嬢は、
ドアが開いて入って来たのが学生服を着た、

澄んだ目にニキビや吹き出物とは無縁のきれいな肌を持った少年。


その場違いな感じに… 
不思議そうな顔をしている。