天使と野獣


中高生の門弟たちは、
自分達にはとても出来ないが、

この東条京介がいれば、
どんな事が起こっても大丈夫だ、

という漠然とした融和感を抱きながら残っている男を見た。


三人目の男は既に闘う意志を無くしていた。

顔は蒼ざめ腰つきが初めから定まっていない。

隙あらば逃げ出したい、とその顔は言っている。


京介は獲物を狙うハンターのような目つきをして
その男を睨み付けている。


京介より頭一つ高く、
がっちりとした体格だからこそ余計に滑稽に見える。


小刻みに震えまで出している男には興味は無い、と言いたげに、

京介は床に倒れている師範代、中野と芳川の体を触り始めた。


が、すぐに思い出したように男を見上げ睨みつけ、



「今日の無礼はこの辺で許してやる。
この二人の治療費を置いてさっさと消えろ。
こいつらも目障りだから一緒に連れて行けよ。」



と、男から金を出させて、出て行く事を許してやった。


男たちの姿が見えなくなると、

残っていた中学生や高校生達は歓喜の声で京介を褒め称え、

京介は全く無視して二人を介抱している。



「京介さん、分るのですか。」



真剣な顔をして中野の胸辺りをさすっている京介に
高校生の一人が声をかけてきた。


この時期、京介のほかに一人いる高校三年生は来ていない。


京介は今まで、いつも通りに顔を見せていたから違和感無く、

緊急事態とばかりに連絡を入れてしまったが、


と、その場の最年長、
高二の高橋直道は改めて京介の顔を見てしまった。


この東条京介も三年生だった。