天使と野獣


一人の男が中央に進み京介の前に立ちはだかった。

見るからに力のありそうな大男だ。

京介を小ばかにしたように、にやけた顔をして立っている。 

 
勿論相手と決めた京介も、
その男を睨みながら履いていた靴下を脱ぎ捨てた。



「トゥー。」



鋭い気合いと共に、相手の顔を蹴るように飛び上がった京介、

力のありそうな相手には、
いつも初めは小手調べの意味なのか、

全身の力が加えられるように飛び蹴りだ。


が、いきなり数歩下がっただけで飛び上がり、

全身の力で顔の辺りを蹴られた男は、

タイミングを崩され、
何も反撃出来ずに床に蹴倒された。


見れば余程強い蹴りを食らったのか、そのまま伸びている。



「小僧… 」



それを見たもう一人の筋肉質な男が、

いきなり京介の背後から襲ってきた。


が、そんな動きなど京介には察知できていた。

その気配と同時に身をかがめながら男の足を払った。


上半身に力をかけていた男はその足払いに… 

見事に尻餅をつく格好だ。


だがそれだけではなかった。


急いで体制を立て直そうとしている男を、
猶予を与えず蹴り上げ、

そのまま押さえ込んで胸の辺りに鋭い打ち込みを入れた。



「ワァー。」



それが男の最後の叫びだった。

多分肋骨を狙われたのだろう、

苦痛に顔をゆがめたまま気を失っている。


同じ道場に通っている練習生達も見たことの無い、
京介の闘争力、

明らかに邪道と思われる技を使い、


悠然と闘っている京介に怯えすら感じている。