天使と野獣


「おい。先生が留守だとわかってこの所業か。
ふざけた野郎たちだ。

来い。俺はちょっと手ごわいぞ。」



今、京介は道場に着き、
この時間帯の師範をしている大学生、
中野健史と芳川直哉を床に打ちのめした男たち、

勝ち誇った顔をして道場の看板をはずし、
その上に足を掛けている男も含めて、三人の男たちを睨み付けた。


背だけは伸びているが見かけはどう見ても完全な少年。

今は学生服も着ていないTシャツにジーンズ、
ジャンパー姿の京介は,より幼いように見える。

が、その言葉遣いは… 



「小僧、威勢がいいなあ。
いいのか。そんな大きな口を叩いて。」



この男たちは昔流に言えば道場破りだ.
しかし今時はもっとたちが悪い。


今もこの男たちは道場主の相馬やその長男、次男と言う
腕の立つ師範代が留守だと知ってこうして来たらしい。


そして留守を預かる師範代を負かしたとして、
看板を持ち帰り、

後で代わりに金を要求するという手口だ。


確かに,いささか腕に自信はあるようだ。

中野健二は昨年の空手道全国大会一般・大学部門で
4位に入った実力者のはずだったが、
見事にやられた。

もっともその闘い方も疑問だろう。


ちょうど稽古を終えて帰るところの中学・高校生がその場に遭遇し、
一人が、慌てて京介に連絡を入れたということだ。


正式な試合には出ないが、

誰もが、東条京介は強い、と分っている。