考えようによっては、目で会話しているようだ。

とにかく京介は、
父が自分に何を託したいのか、

それが分かれば自分の行動は決まっている。


父に失望感を与えるようでは子供ではない。

それは京介の、
子供として最大のポリシーだった。


そして、一瞬にかける気迫や気力は

空手も剣道もさして違いはない。

自分が出来る、と信じてことに当たれば出来る。


できない事を考える発想は、
京介にはなかった。



「わかった。やってみる。

この人に無用な刺激を与えず、
居合いの心で一瞬に事を運べば可能性はある。だろ。

俺、この刀なら何でも出来そうだ。」



そう言いながら京介は、
真剣な顔をしてドラム缶を一周し、
自分の立つ位置を決めた。

その動き方、足運び… 

既に剣豪、東条京介が出来上がっている。


ぐったりしている佐伯の顔は見たくないのか、

京介は佐伯の背後、足場の良い場所を選び、

鞘を落として刀を構えた。


みんなは固唾を呑んでその様子を見入っている。

その時の京介、
何ものでも射殺すような、
鋭い眼差しでドラム缶を睨んでいる。

まさにその雰囲気は
一瞬に命をかける剣士、
そのものだった。



「えいっ。」



全てのものを震え上がらせるような鋭い気合の声と共に、

飛び上がった京介の刀が宙を切り… 

地面に着地した時と呼応するようにドラム缶が… 

数箇所に亀裂が入り、

見る見る間に、いくらかのコンクリートと共に、

崩れるようにはがれた。