天使と野獣


「それが… 警部はコンクリート詰めにされてドラム缶の中に… 
かなりやられていた上に、
コンクリートが固まり始め… 

特殊班が対応していますがなかなか救出できず、

何を考えるにしましても、中には生身の警部がいますので、
やっと顔だけは出ていますが、

内臓にかかるコンクリートの重みや締め付けで、
かなり苦しいようで、次第に意識が消えかかって来ています。

どのような形で入れられているのか判りませんので
コンクリートを溶かす薬品なども使えず、
大きな刺激は与えられません。

現場からの報告では手のつけようが無いらしいです。

今、ドラム缶を切り,コンクリートを刺激少なく砕く
特殊な機械を運び込むように手配したようですが、

そのドラム缶は埠頭の護岸工事現場に放置されていましたので、

見つけ出した時には既に外側は他のコンクリートと固まり,
簡単には動かせず、

とにかく救出出来るまでに警部が持ち堪えられるか… 」


「何だと。大変ではないか。
わかった。早く行こう。」



何か考えがあるのか、

栄は隣で眠っている京介を、

父親の隣と言うことで安心して眠っている、
子供のような京介を昨夜のように起こした。

どうやら京介は、どんな時でも父親の行動に反応するようだ。



「父さん、お早う。何かあったのか。」



十分な睡眠をとったのか、

京介はいつもの涼しげな眼差しを栄に向けている。


栄はそんな京介を確認し、
真面目な顔をして、

佐々木刑事から聞いた佐伯警部の状態を話している。