その夜は明け方に巡査が再度訪れ、
残っていた男たちを手配した救急車で警察病院へ運んだ。
栄は眠っている京介の隣にベッドを運んでもらい、
体を休め、昨日からのことを思い出していた。
手術で手こずり睡眠時間を失ったことは何度もあるが、
このように、息子がめちゃくちゃに壊した男たちの
手当てをする羽目になろうとは…
自分の発案とは言え、平気で、
あのようにひどい状態にまでした息子に苦笑させられている。
そしてうとうとしていた頃、
栄は静かに入ってきた警察官に起こされた。
時刻は既に九時になろうとしている。
「すみません、お疲れのところを… 」
警察官の一人は顔見知りの佐々木だった。
佐々木は、隣で眠っている京介ではなく、
遠慮がちに栄を起こした。
「おう、佐々木さんか。
あんたらも大変だったなあ。
警部さんは無事助けたかね。」
一応礼儀として事件の報告に来たのだろうと思った栄は、
温厚な顔をして佐々木に向かった。
「はい。お陰さまで関係者は一毛打尽にしましたが… 」
何があったのか、
佐々木の顔は曇り、口調は歯切れが悪い。
「手遅れだったのか。」
佐々木の重苦しい様子から、
栄は最悪の言葉を出した。
昨夜の行為は犯人逮捕という事もあったが、
まずはとにかく、犯人が連れ去ったと思われる
警察官の救出、行方を聞き出す為の荒行だった。
それなのに手遅れだったとは…
息子には聞かせたくない話だ。
栄がそう思うほど、佐々木の顔は沈んでいた。
「いえ… まだ警部は… しかし… 」
「どうしたのだ。聞かせてくれんかね。
かなりの重症なのか。」
その言葉で、
佐々木は意を決したような顔つきをして、
栄を見ている。

