天使と野獣


が、先との違いは、
男は辛うじて意識があった。

そのような力加減で攻撃を与えたようだ。



「あきらめろ。
お前には死神が取り付いた。
先は決まっている。」



そう言いながら京介はゆっくりと男に近づく。


その姿は、
まさに獲物をいたぶりながらゆっくりと始末する。

その行為を楽しんでいる野獣、
いや悪魔と言ってよい。


いっそのこと気を失えたらどれほど幸せか。

男は苦痛に耐え、
恐怖に怯え、涙を流しながら、

必死で首を振り,口をパクパクさせている。

声は出ないようだ。



「何だ、何か言いたいのか。
俺はお前たちの懺悔など聞きたくは無い。

まあ、お前たちが連れ去った
警察官の行方なら聞いてやってもいいぞ。

と言ってもお前は今声がでない。
口を大きく開けて言ってみろ。」



京介のその言葉に、
男は慌てて顔を上げ、

残っているエネルギーを全て搾り出すような様相で
口を開けている。

それほどの恐怖の中にいたのだ。

この恐ろしい苦痛の世界から
解放されるならば何でも話す。

秘密のことでも進んで口を割る。

とにかく廊下にいる警察に助けてもらえるなら何だってする。

男の頭にはそれしか浮かんでいない。


京介がその男を凝視していると、

品川区と港区の境にある埠頭の名前を言っているようだった。



「倉庫の名前は… 雷雲。
ふざけた名前だ。」



そう言うと、京介は躊躇なく
男の顔面を殴りつけ気絶させた。


その残忍なまでに荒っぽいやり方は

やはり野獣か悪魔だ。


こんな姿は、父親としては人に見せるわけには行かない。