「わあああー… お前、こんなことをして良いと思っているのか。
外には警察もいるのだぞ。」
目撃者としての、
銃弾で負傷しているはずの京介を、
口封じのために殺そうとやって来た侵入者。
目の前で、仲間に加えられた残虐な行為に、
法治国家の日本、警察官がいるのに
こんな非道は見逃されない、と、
血の気を無くし、
怯えた顔で震えながら、
警察官の存在を、
目の前にいる野獣に知らしめようと、
必死の形相で声を出している。
「それがどうした。いくぞ。」
京介は大きく空手の型を構え、
それだけで怯えている男の右肩を
容赦なく蹴り上げた。
「ぎやぁー。助けて、止めてくれ。頼む。
警察を呼んでくれ。
救急車を… 」
肩を蹴られ、骨折したのがわかったのか、
男は力の入らない手で
必死にその肩を押さえながら訴えている。
そう、男は叫んでいるが…
同じ空間にいる京介には分かるかも知れないが、
外の警察官には言葉としては伝わっていない。
こんな恐ろしい拷問には耐えられない。
こんなことをされるぐらいなら何でもする。
このままでは殺されてしまう。
こいつは人間の皮をかぶった野獣だ。
早く何としても逃げなければ殺されてしまう。
やばい。警察だろうが何だろうが構わない。
とにかくこいつから逃げられるものなら…
男の顔には言葉は無くてもそう書かれている。
「まだだ。」
しかし野獣化した京介の攻撃は終わりを知らない。
床に這いつくばっている男の胸ぐらを掴み、
壁に投げ飛ばし、
すかさず腹部に連打を入れた。
その瞬間、男は先の男同様、
声にならない悲鳴を発し、
やはり口から血を噴出して崩れ込んでいる。

