天使と野獣


持って生まれた才能か、
幼いとは言え、研ぎ澄まされた精神力と
運動神経の良さから来る機敏な動き、型のきれいさ、
いや、母の為に勝とう、とする強い意志。


母の側をはなれたくなくて、
幼稚園は入園式だけ通い、あいまいな内にやめてしまった。

それで近くの剣道道場へ、となったのだ。


一年生こそ、ルールが良く分からずに、
自分から動き回って失格になってしまったが、

二年生からは、体は小さかったが、本分を発揮して、

毎年、武道館で行われた少年剣道部門では
全国大会で優勝をしていた。


大田区の東条京介… 
剣道愛好家の間ではちょっとした有名人、
少年剣士だった。


が、母の死でパタリと剣道を止め、
学校を抜け出して町を徘徊しるようになっていた。


そしてある日、
今の空手の師・相馬大二郎と出会い… 

体を動かす事の好きな京介は、以後空手に精進してきた。


父の栄にしても、
京介が母亡き後の寂しさを紛らわすために、
ただ当ても無く町を徘徊することは悲しく思うだけだった。


いや、時としては子供ながらに、
不良学生やチンピラと喧嘩をしていたようだ。


京介が素直に壊したと話す、
ベンチや壁などを夜中に修理に行ったこともあった。


そのような時に空手の師が出来、
京介も彼と行動を共にする事を好んだ。

それほどに息子が熱中出来るものなら、
栄は親として金を払っても頼みたかった。


とにかく京介は天賦の才と言うのか、
闘う事が好きで、とにかく強い。

相馬が技を教えればすぐマスターして応用し、

二人で闘った事は無いが、
十七歳になった今、

相馬の中では既に京介の方が上だ。