天使と野獣


もちろん刑事たちも、
男たちの発する罵声や怒声の中で戦っているが… 

耳に入るのは京介の、

闇の空気を凍らすような冷たく鋭い気合の声。

そしてそれと呼応するように、ものが壊れる音、

打撃を受けたのか、男たちの悲鳴と
断末魔のような悲惨な声だ。


何となく、自分たちは無用のチョウブツ、

のように感じた刑事たちは、
途中から動きをやめ、
邪魔にならないように、ドア近くに固まった。

もちろん、攻撃を受ければ応戦するが… 
どうやら必要ないらしい。



「二人残して後は部屋から出してくれ。」



その声に振り向くと、どこから現れたのか、

栄がドアの近くに立ち刑事たちに指示を出した。

京介との間でそう言うことになっていたらしい。


その凛とした迫力のある声に、
刑事たちは何も考えず、

攻撃され、ふらついている男たちを廊下へ追いやり、
自分たちも出た。

見ればドアを閉めて栄もそこにいる。


息子がまだ中で闘っていると言うのに… 

何故か、栄は苦笑、
いや、不適な笑みさえ浮かべている。


二人は外に出た事を後悔した。

民間人の高校生がいるのに、
刑事の自分たちが外に出たとは… 

それなのに、この人はドアを閉めてしまった。



「東条さん、どういうことです。
まだ京介君が中ですよ。」



木頭は興奮した声で栄を見た。



「しかし、あの強さは… 」



佐々木は目の当たりにした京介の様子に
唖然としたようだ。