天使と野獣


この親子は、
やはり事の重大さを認識していないのではないか。

子供の戦争ごっこ程度に考えているのかも知れない。

何があっても警察官の我々がいるから危険は無い、
とでも思っているのか。


だからあんな風に、遊び感覚でいられるのだ。

とんでもない。

ヘロインが絡めばいかに悲惨な結末になってもおかしくは無い。

現に何人もの警察官さえ殺されているのが現実だ。


暗闇の中でお互いの顔を見ることなど出来ないが、

木頭と佐々木は東条親子の口車に乗ってしまったことを後悔した。


その証拠に、同時に、
気持の中で、お互いが潜んでいるであろう場所を見つめた。

拳銃使用許可は出ているが、こんな暗闇、

しかも室内では誰に当たるか分らないから使うことは出来ない。

武器は巡査が携帯している警棒を借りている。


とにかく二人で十人の悪人と戦わなくてはならない。

二人は手にしている警棒を握りなおした。




その内に建物の周りを歩き回る足音と共に、
廊下から部屋を物色している懐中電灯の明かりが… 

建物の一階部分をひと舐めして、

四人が潜んでいる部屋へと近づいて来る。


次第に明かりが近づき… 

窓にも発光体のように人影が浮かび上がった。

そしてドアが蹴散らされたように乱暴に開くと同時に、

それが合図のように窓も破られた。


三人の男がドアから、
二人が窓から侵入してきた。

男たちは片手に懐中電灯、
片手にそれぞれの武器を握っている。

が、見れば刃渡り20センチほどのドスや金属棒だ。

やはり暗闇での発砲は危険が伴うと考えたのだろう。