今では新米医者の研修の場としても利用する事がある。
が、ほとんどはボランティアの人達による、
路上生活者の介護に使われている。
手術道具やかなりの薬がそのまま保存されているから、
鍵だけは厳重にしているが、彼らがいれば安心だ。
それに、外見が不細工のままのほうが何かと便利だ。
今も二階の数部屋には患者や世話人たちが数人いるが、
栄が連絡を入れていたから降りて来ることは無い。
「よし。これでいいぞ。
京介はそのままベッドにいろ。
侵入者があれば捕まえて警部さんの居所を聞きだせ。
少しぐらい手荒くしても目をつむる。
容赦は無用だ。
お前がいくら壊してもわしが元に戻してやるからな。」
そういって栄は茶目っ気のある顔をして、
まるで指揮している警察官のような口調で、
京介をベッドに寝かせた。
そして京介は… 嬉しそうな顔をしている。
その姿は、まるでこれから起こる大活劇を楽しみにしている
観客のようにも見える。
同じ空間にいる刑事たちは責任感からの緊張、と
武者震いを感じている。
そして、」あまりにも自分たちの心境と異なる雰囲気の二人を、
驚愕の思いで、その親子の様子を見ているだけだ。
自分たちの緊張感とはあまりにも異なる。
事の本質を本当に分かっているのだろうか。
平穏な毎日から脱皮するように、
少しだけスリルを味わおうとしているようだ。
だからあんなに軽口を…
どんな危険が起こっても警察官がいれば大丈夫、
と思っているようではないか。
そして、ものの一時間もしない内にその時が来た。

