「課長、佐々木です。
ちょっと伺いますが、
今日の夕方から今までに、
捜査一課の者以外の誰かが捜査本部に来ていませんでしたか。」
「ここにか。ああ、生活安全課の古株婦警、確か名前は吉永だったか、
彼女がうちの水島君を訪ねて来ていた。
しかし彼女は今日、子どもが盲腸の手術をするから、
と午後の内に早退していたから会えず、
それで… そうだなあ、
六時ごろから七時過ぎまでここに居て電話番をしてくれていた。
それがどうかしたのか。」
「それで今彼女は。」
「さあ。姿が見えないから帰ったのではないか。
おい、一体何があるというのだ。
分るように説明しろ。」
「すみません。確証は無いのですが…
課長、一度課長のデスクにある電話を調べてください。
盗聴器か何か仕掛けられていませんか。」
「何だと。ちょっと待て。」
「佐々木、お前まで仲間の警察官を疑っているのか。」
課長がちょっと待て、と言い、
会話の途切れた時、
木頭が佐々木に詰め寄っている。
「木原や吉田がヘロインをくすねていたと言う事は他にも仲間が居ても不思議ではない。
警部はいつも警察車両に付けている無線電話も持っているのだ。
アレで掛ければ固定電話と同じように
警視庁のコンピューターを通してすぐに課長の所に通じる。
警部がもし携帯ではなく
その警察無線の方を使って連絡したのなら、
盗聴されたという可能性もある。」
佐々木刑事がそこまで話すと
課長からの声が聞こえて来た。
その声はいつもの落ち着いた管理職然としたものとは程遠く、
微妙に震えさえ感じられる動揺したものだった。

