何、こいつ、本当にやるつもりか。
いくらなんでも無謀だ。
自分達でも高嶺の花の東大だぞ。それも医学部だぞ。
こいつ、何を考えているのだ。
いや、こいつの親父もおかしいではないか。
医者ならば東大がどんなところか分っているはずだろうに…
こいつの事を知らないのか。
こんな高校に通っている追試常習犯の息子をどう思っているのだ。
教師達は次第に父親である栄の存在に興味が移っている。
金を渡した、と言うことは、話は承知しているはずだ。
もちろん高木が一番戸惑っている。
東条の態度に腹が立ち、無理を承知で、ただの思いつきで出した条件だった。
まさか、こんな言葉を聞くとは…
申込書を自分が出すと言ったのも、
どうせすぐに謝って来るだろう、と言う考えがあったからだった。
「分った。その内に行こう。」
とにかく頭を整理して… と、高木は曖昧な返事をしている。
「冗談じゃあない。
俺は今すぐにも行きたいところだが、先生は仕事があるから放課後までは待つ。
な、そうしてくれ。」
と、押し切られ… 結局、
その日は見張られているような気分で授業を終えた高木、
京介と本屋へと向かった。
「京介、お前の携帯が鳴っているぞ。」
夕食も終わり、栄は風呂上りの一杯を楽しみながら、リビングで専用のアームチェアーに腰掛けてテレビを見ている。
受験勉強中の京介も、
同じ部屋でソファーに寝転びながら問題集を見ている。
そんな時に、家に戻るとすぐ、リビングの電話の横に同じように置いている京介の携帯が鳴ったのだ。

