「痛い。
父さん、もっと優しくやってくれよ。
父さん、麻酔は無いのか。
痛いよ。」
そこには安本が思っても見なかった、
腕白坊主の…
小学生のような京介がいる。
いつも、東条京介は自分の世界にいて、
クールな態度。
それしか見ていない安本、
自分の目と耳を疑いそうだ。
それにしてもこの状態…
一体何が…
自分は夢を見ているようだ。
「うるさい、赤ん坊みたいに騒ぐな。
手元が狂うぞ。
おっ、お前は運がいいな。
銃弾は辛うじて骨からずれている。
やっぱりお前には母さんが付いているな。
いや、悪運が強いのか。」
栄は全神経を京介の傷口に集中させながら、
それでも、痛い、と言って
父に甘えているような息子の注意をはぐらかそうと、
京介の好きな話題を口にしている。
母の話はいくつになっても京介の心を和らげる。
栄にしても然りだが、
年齢が異なる分京介の方が効き目がある。
裏の世界では
ウインド・タイガーと異名を持つほどの挌闘人間。
何事にも無関心な高校生。
というように,自分を作り上げているような京介だが、
この時ばかりはまさに幼子のような雰囲気を出して
全身で父に甘えている。
いや、麻酔もなく、
体内から銃弾を取り出している、ということ事態、
信じられない事だ。
出血も… あんなにシートを汚している。
離れたリビングに座ったまま安本は目が離せず、
東条親子の様子を見つめていた。
何か手伝いは… と思うものの、
まるで尻から根っこが生えて来たみたいに動けなかった。

