教育実習日誌〜先生と生徒の間〜


「ねえ、美羽ちゃんは今、下宿しているんだよね?

親元から離れて、寂しくなかった?

私なんて、高校卒業してから一人暮らししたのに、すっごく寂しかったよ」


そう言った私に、美羽ちゃんは首を横に振った。


「……家にいるより、ここのほうがいいです」


か細い声で、それでもしっかりと答えてくれた。


私も、昨夜ネットで『場面緘黙症』を調べてみてわかった。


一番話しにくいのは、プレッシャーがかかる大勢の前で注目されて話すこと。


一対一だったり、信頼できる人たちとだったら、普通に話せることも多いって書いてあった。


きっと、女の子同士、仲良くなれると思うんだよね。


そうしたら、彼女の体調不良の原因も教えてもらえるだろうか?



「そっか。下宿のおじさんやおばさんが、きっといい人なんだね。

他の下宿生とも仲良くできるんだったら、下宿生活も楽しそうだよね~!

お友達のお部屋へ行き来したり、毎日が修学旅行みたいな感じ?」



何気なくそう言ったら。


美羽ちゃんの顔が赤くなった。