とりあえず、美羽ちゃんがトイレから出てくるのを黙って待っていた。
そろそろ、みんなもお弁当を食べ終わる頃。
トイレにも生徒が来るので、早く出てきてくれないとここでは目立ってしまう。
そわそわしていたら、ようやくドアが開いた。
青白い顔をして、お弁当の入った巾着袋を抱えている。
今にも泣きそうな顔をしているのは、気のせいじゃなさそう。
「落ち着いた?」
「……はい」
「保健室、本当に行かなくて大丈夫?」
「……はい」
「それじゃあさ、二人でお話できそうなところへ行こうか?」
「はい」
「良かった。私、美羽ちゃんと仲良くなりたかったんだ。
じゃあ、松本先生にお願いして、社会科準備室のカギを借りてくるからね。
美羽ちゃんのことは言わないから、安心して」
どうか、私の二つの予想は外れていますように。
祈るような気持ちで、社会科準備室へ向かった。



