よくある、白いふた付きの汚物入れ。
毎月お世話になるはずのこちら……それを使わないときは。
お姉ちゃんのことを思い出した。
6歳年上の桜お姉ちゃん。
3年前に結婚して、今はもうすぐ生後半年になる女の子のママ。
去年の春休み、実家に帰ってきた私が見たものは。
つわりで激やせして、洗面器を抱えて寝ていたお姉ちゃんだった。
その時確か、お姉ちゃんはこう言っていたはず。
『匂いをかいだだけで、もう吐いちゃうの。
今は白いご飯も、ザンギ(注:北海道名物、鶏のから揚げのようなもの)も、焼き魚も、勘弁してって感じ』
何もできずに吐いていて、旦那様に『実家で休ませてもらったら』と言われて里帰り。
おかげで私は春休み中、実家ではろくなものが食べられなかったっけ。
いやいや、と、頭をぶんぶん振った。
だいたい、美羽ちゃんはまだ高校1年生。
こっちに来たばかりで、親しい友達もいない。
彼氏も……いるとは思えないんだけれど。



