教育実習日誌〜先生と生徒の間〜


思わず声をかけてしまったけれど、警戒されるかもと思いつつ、とりあえず話を続ける。


「あ、私、安西です。

美羽ちゃんって馴れ馴れしく呼んじゃってごめんなさい。

小学校で実習した時の癖で、つい下のお名前にちゃん付けしちゃった。


美羽ちゃんのことがちょっと気になって、ここまで来ちゃったの。

もしかしたら、具合が悪くて食べられないの?」



正直なところ、私の頭の中では『拒食症』という言葉が浮かんでいた。


これも、思春期の女の子に多い。


慣れない環境で、しゃべることもできない美羽ちゃん。


もしかしたらって、一瞬考えた。


返事はなくて、まだ水を流す音と、美羽ちゃんが苦しんでいる様子がうかがえた。



「美羽ちゃん、大丈夫!?

私、養護の先生を呼んでこようか?」



すると、水音にかき消されそうな小さな声で、返事が聞こえた。



「大丈夫ですから、誰にも言わないで……」