放課後、職員会議が終わった職員室で。
「松本先生、私、気になる生徒がいるんです。
木内美羽(きうち・みう)ちゃんって、何だかクラスの中になじめていないような……」
そう言ったら。
「もう気づきましたか。
実は、木内は『場面緘黙症』なのです」
「ばめんかんもくしょう、ですか?」
何だろう、それ?
初めて聞く言葉だった。
「安西先生が学生の頃、とってもおとなしいクラスメイトはいませんでしたか?
小学校時代とかでも、発言をほとんどしないような。
少人数で仲のいい友達とだったら、多少は話すことができても、クラス全員の前では何も言えなくなってしまう、そういう子がたまにいるのです。
木内は高校入試の時、中学校からの引継ぎで『配慮が必要な生徒』として伝えられていました。
しゃべらないのではなく、しゃべれないのです。
授業中もそれなりの配慮をしつつ、でも特別扱いはしないように気をつけています。
2日で気づいたのはさすがですね」



