それから数日間、私はとにかく安静にしていた。


ひたすら、赤ちゃんの無事を祈って……。


入院してから何回目かのエコーで、やっと心拍が確認された時、初めてうれし涙が流れた。



白黒のモニターに映る、小さなそら豆のような赤ちゃん。


さらに小さな心臓が、ぴこん、ぴこんと点滅するように見えた。


ああ、この子はもう、私とは別の命を持って生きていると実感した。




絶対安静が解かれて退院する前に、担任の先生が来てくれた。


退学届と、通信制高校のパンフレットや願書を持って。


先生は、私の決断を応援すると言って、進学先の相談にはいつでものるからと励ましてくれた。


先生に、そして実は先生の恋人である実習生の菫先生にも、沢山迷惑をかけてしまった私達。


いつか、私達が立派なパパとママになった姿を見せることが、一番のご恩返しかも知れない。



退院の日、トモアキ先輩とほんの少しだけ二人で話すことができた。



「俺が医学部に合格したら、大学のそばで一緒に暮らそう。

だからそれまで、ミウは出産と子育てを、俺は受験勉強を頑張ろう。

家族三人で暮らせるようになるまで、それぞれ自分のできることを精一杯頑張って、みんなに認めてもらおう。

俺達がちゃんと父親・母親になれるってことを」


「先輩……」


胸がいっぱいになった。


「ミウはもう退学して、俺と結婚するんだから、先輩・後輩の間柄じゃないだろ?」


「え?」


「先輩はもうおしまい。呼び捨てでいいよ」


「そんな……無理ですっ」


「じゃあ、任せるから今度会う時までに考えといて」


「……はい」



そして、私は先輩のお父さんの車に乗せられて、先輩の実家へ向かった。