教育実習日誌〜先生と生徒の間〜


「本当は菫が大学を卒業するまで待とうと思ってた。

でも、早めたほうが都合が良い、俺にとっては有り難い理由ができたんだ。

誤解されないように念のため言っておくが、このために結婚する訳ではないぞ」


「……何の事?」


「管理職から、長期研修へ行かないかと打診されている。

REXプログラムっていう、海外の学校へ日本語教師として派遣される仕事だ。

待遇は、義務教育で言うところの『日本人学校教諭』とほぼ同じで、2年から4年、どこかの国の学校へ勤務する。

どこの国へ行くのかは、直前にならないとわからない。

とは言っても、日本語教育を必要とする地域だから、比較的住みやすい所が多いらしい。

そのための書類選考が、9月以降に始まるそうだ。

できればその前に『松本菫』になって欲しい」


「どうしてその前なの?」



これこそが、俺を悩ませていたことだった。


菫を焦って入籍させたくはなかったが、それでもこれはある意味俺たちを後押ししてくれる条件でもあった。



「日本人学校教諭とほぼ同じ勤務形態のREXは、ある条件を満たさないと書類選考が通らないこともある。

都道府県によっては、その条件を満たさない限り、応募資格も与えないそうだ。

……海外派遣を希望する男性教諭は、既婚者であること、そして家族と一緒に赴任することが、隠された条件なんだ」