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「安西さん、飲んでる~?」


実習生が固まって座っているテーブル。


最初はここに集まって座っているけれど、後からちゃんと指導教諭のところへお酌しに行くのがお約束、のはずが……。


「渡辺君、私、そろそろ竹森先生の所へご挨拶に行ってくるね!」


立ち上がろうとした私の隣で、まだ渡辺君がグラスにビールを注いでくる。


「もうちょっといいじゃん。竹森先生、松本先生と話してる最中だしさ」


……だから行きたいんですけど、なんて言えないし。


「渡辺君はご挨拶に行かなくていいの?」


「ああ、俺は一番最初に済ませてきたからもういいの」


さすが体育会系、飲み会慣れしてるのかも。


「あ、私そんなにお酒強くないから、もういいよ」


冷えたビール瓶の栓を抜いて、準備してるし……。


「へえ、そうなんだ。……ところで安西さん、メアド交換しようよ。

採用試験の情報とかもやり取りできるしさ」


スーツのポケットから、黒い携帯を出した渡辺君。


ちらりと先生の方を見ると……竹森先生と談笑しているように見える。


あ、一瞬こっちを見てくれた!


……明らかに目つきが怖いんですけれど。


どどどどうしよう。