何故かと聞かれても、想像できることと言えば……。
ダメだ、ご本人には言えない妄想が浮かび上がってきた。
絶対にそうではないはずだが、じゃあ、どうして産婦人科医なんだ?
出産は時間を選べないから、昼夜の区別なく激務だと聞いた。
リスクが大きく、訴訟が一番多いのも産婦人科で、若手が敬遠するのも頷ける。
「わかりません。産婦人科を避ける理由ならいくらでも思い浮かぶのですが……」
そう言った俺を見て、吉川の親父さんはいきなりこう言った。
「おめでとうございます!」
「えっ?」
「毎日、心の底からそう言える仕事って、貴重だと思いませんか?」
「……はい?」
「おめでとうございます、ご懐妊ですよ。
おめでとうございます、元気な男の子ですよ。
そう言って、共に喜び、感動を分かち合えることが、他の科との大きな違いです。
新しい命を生み出す、人生で一番嬉しい出来事のお手伝いができる。
確かに激務ですが、他の科にはない、やりがいを感じる仕事なんです」



