『指導室』と書かれた部屋に入る。
吉川の親父さんが、知り合いのナースに許可をもらったようだった。
二人だけで話ができる方が、こちらとしても有り難い。
「この度は、息子がご迷惑をおかけいたしまして、本当に……」
「いいえ、それは正直なところ、私達の管轄外です。
私はあくまでも、木内美羽の担任としてここへ来ていますから。
木内を……これから先、どうかよろしくお願いいたします」
俺は別に吉川の親父さんを責めたい訳ではない。
ただ、木内の今後を託すために必要な話がしたかった。
「もうお気づきでしょうが、木内は『場面緘黙症』です。
私の憶測に過ぎませんが、小学校へ入学した頃には既にそういった状態だったそうですから、家庭環境にも何らかの要因があるのではないでしょうか。
彼女は、網元の娘です。
大勢の漁師に囲まれて育ち、可愛がられてはいたのでしょうが、おそらく『怖かった』のだと思います。
吉川先生の元で、心穏やかに過ごすことこそ、彼女にとって幸せなのかも知れません」



