職員室へ戻ると、菫が実習日誌を抱えて待っていた。
「すみません、お待たせしました。
今日、勤務時間が終わってから、生徒のお見舞いに行くんです。
そのための準備をしていました」
おそらく、これだけで通じるはず。
「それで、元気なんですか?」
心配そうに尋ねている『元気でいてほしい相手』とは。
「ええ、元気になったそうですよ、二人とも」
そう、木内もお腹の子も元気だ、という意味がすぐにわかったらしく。
「良かった~! ずっと気がかりだったんです。
あとでその時の様子を教えてくださいね」
「わかりました。では、後でお伝えします」
にこにこしている菫から、実習日誌を受け取ってチェックする。
俺からの評価を書き、判を押してから聞いてみた。
「岩谷先生の調子はどうでしょうか?」
一瞬、間があった。
「今日の放課後、話し合うはずが突然キャンセルになったみたいです。
岡崎先生、時間年休でいなくなっちゃったようですよ」
職員室の黒板を見ると、確かに年休の欄に岡崎先生の名前があった。
この時期に……明日が岩谷の公開授業だというのに、大丈夫だろうか?
不安に思いながらも、他人の年休に俺が文句を言える立場ではないので黙っていた。



