いやいや、ここはやっぱり大人の余裕でかわさないと。
大人の余裕を絞り出して、何とか答えることにした。
「んもう~、せっかく『ノーコメントです』って言った意味がなくなっちゃうじゃない!
でも、ここだけの話ね。
私のことをとっても大事にしてくれる、優しい人なんだよ」
うん、抽象的、なおかつ適切な答えだと思う。
「ふ~ん、優しいんだ~。
うちのマツケンとは大違いな彼氏なんだね、きっと」
どどどどうしてここに先生の名前が出てくるのかな!?
「い、いや、松本先生も優しいと思うよ、うん」
「菫ちゃんったら~。顔が引きつってるよ。
ホントはかなり厳しく言われてるんじゃないの?」
「そうそう、だってさ、岩谷先生なんて、岡崎先生からさんざんいじめられてるもん」
「うん、あれは可哀想だったよね~」
「あれじゃあ、先生になる気なくしちゃうよ」
派手系女子みんなが声をそろえて、裕香を擁護していた。
「どんな風に可哀想だったのか、教えてくれる?」
今度は私が質問する番だった。



