俺はラグの上で正座したまま、菫の話に耳をそばだてる。
「もしもし、うん、大丈夫だよ。
え? 裕香? どしたの? 大丈夫?」
菫が俺に目配せする。どうやら、俺に話の内容を聞かせたいらしい。
携帯のボタンを操作し、ハンズフリーモードに切り替えたようだ。
菫は携帯を少し自分から離して、そのまましゃべり続けている。
スピーカーから、岩谷裕香の声が聞こえてきた。
『菫・・・・・・私、実習続けられそうにないよ。
ねえ、教育実習って、途中で辞めたらダメかな?
もう、単位も教員免許もいらないよ・・・・・・』
最後の方は、泣き声になっていた。
「裕香! ちょっと待って! あと1週間、いや、5日頑張れば終わるんだよ。
せっかくここまで耐えたのに、もったいないよ。
まだ授業だって一度もしてないんだから」
『授業なんて、できないよ・・・・・・。
だって、指導案の書き方も教えてくれない。
指導書も貸してもらえない。
生徒の目の前で、私のことを目障りだって・・・・・・。
こんなんでどうやって指導案を作って、授業をやればいいの!?』
泣きながら訴える岩谷の言葉に、俺と菫は絶句した。
岡崎先生が、実習生に対してそこまで酷いことをしていたとは、全く知らなかった。



