「いいか吉川、お前が正しく避妊しなかったせいで、今まで木内がどんな想いでそれを隠し通してきたか想像してみろ!
このままではせっかく入った高校を続けられそうにない。
自分を信じて下宿させてくれた両親に、何て言えばいいんだろう。
受験生のお前にだって、余計な心配をかけたくない。
でも、どんどん体調は悪くなるし、いずれ隠し通すことは難しくなるに決まってる。
誰かに相談したくても、こっちに相談できそうな相手はいない。
どれだけ木内が追い詰められていたか、よく考えてみろ!」
おそらく、毎日必死で恐怖心と戦っていたはずだ。
自分の立場と、吉川の将来を考えたら、中絶を勧められるに決まっている。
だけど、好きな相手の子どもなら、どうしても産みたいと思うのが自然な感情だろう。
菫が、そうだったように。
顔面蒼白で震える吉川に、少しだけ同情もする。
俺だって、菫が悩んでいたとき、気づくのが遅れた。
「ここから先はオフレコだからな。
俺に彼女がいるのは知ってるだろう?
政経の最初の授業で、生徒から質問されて答えたからな」
吉川が、静かに首を縦に振る。



