「あらあら、はじめましてね。玖城雅子よ」

母は僕を除けて、由月に近付いた。

「…どうも」

由月はさっきと様子が違い、どこか緊張した面持ちになった。

まあ10年ここに戻ってきていないということは、この子に会うのははじめてなんだろう。

お互い存在は知っていても、顔を合わせるのは生まれてはじめてだからなぁ。

「ああ、キミが由月ちゃんか。よろしく。俺は玖城貴信(たかのぶ)。キミの叔父になるんだ」

父も広間から出て、由月に挨拶する。

「雅貴くん、早速由月と話をしてくれたのね?」

伯母が嬉しそうに言ってきた。

「僕が迷子になっているところを、助けてくれたんです」

「まあそうだったの」

伯父と伯母は心底意外だという顔で、由月を見る。

由月は見られて居心地が悪いのか、ちょっと顔を赤らめ、そっぽを向いてしまった。

…やっぱり可愛いなぁ。

いつも周りにいる女の子はうるさいぐらいで、こんなに大人しい子は近くにいない。

今は色白が流行っているのに、この子は健康そうに焼けているのも、中身とギャップがあって良いなぁ。

でも遠距離恋愛って、難しいって言うし…。

僕が1人の世界に入っている間に、由月は両親の質問攻撃から逃れる為に、僕の背後に隠れた。