「あることはあるけど…。あり過ぎて、ワケが分かんない時がある」

僕の答えを聞いて、由月はきょとんとした。

しかし次の瞬間、ふっと笑った。

「何じゃ、そりゃ」

「あっはは…。いろいろあると、迷うんだよね」

「アンタ、迷ってばっかだな」

「そうだね」

…ヤバイ。

この笑顔は、胸が高鳴る。

思わずイトコ同士って結婚できることを、思い出してしまうほどに魅力的だった。

他愛のない話だったけど、僕はスッゴク楽しかった。

やがて広間が見えてきて、話し声も聞こえてきた。

「ついでだから、雅子叔母さんに顔見せしとくかな」

「うん。両親喜ぶと思うよ」

「そっかな?」

「うん!」

僕はすっかり舞い上がっていた。

広間に戻ると、心配顔の四人に出迎えられた。

「雅貴! アンタ、どこ行ってたのよ?」

母が駆け寄ってきた。

「ちょっと邸の中を探索してたら、迷子に…」

「ここ、複雑に入り組んでいるから、迷子になりやすいのよ。でも戻って来れてよかったわ。今、兄さんと捜しに行こうかと…あら?」

母は僕の背後にいる由月に気付いた。

「由月…ちゃん、かしら? もしかして」

「…うん」

由月は僕に隠れながらも、頭を軽く下げた。