それに最近じゃあ女の子も自分のことを『ボク』や『オレ』と言う子も少なくない。

…そもそも小学生って、性別が分かりづらい子が増えてきているから、ややっこしいんだよな。

「ところで、誰か捜してんの?」

「あっ、いや、その…。まっ迷子になっちゃって」

アハハと苦笑しながら言うと、由月は腕を組み、ため息をついた。

「どこに行きたいの?」

「えっと、玄関入ってすぐの広間」

「…随分遠くから来たんだね」

「たっ探検してたら、迷っちゃって」

「この家、増改築繰り返してて、慣れないとすぐに迷子になるんだよ」

そう言いながら歩き出した。

広間まで案内してくれるみたいだ。

「そうなんだ。どおりで入り組んでいると思った」

「まだウチに金があった頃、先祖がおもしろがって家をいじくったんだって。ヘタすりゃカラクリ邸さ」

「でもそういう所に住んでるのって、おもしろくない?」

「実際住んで見ると、はた迷惑なだけ」

答え方は素っ気無いけど、話はしてくれる。

この子が例の男の子とは、ちょっと思えないな。

無表情で話をするけど、難しい性格ではなさそうだし…。

「アンタの住んでいる街の方が、楽しいんじゃない? 都会だから、いろいろあるんだろう?」