「んっ…?」

由月は僕を片手で抱き締めたまま、もう片方の手を伸ばし、机の上からファイルを取った。

「ちょっとコレ、見てくれよ」

「何? コレ」

僕は受け取り、ファイルを開いて見た。

内容はここら辺の土地のことだった。

昔、温泉や金が出たという歴史の一覧表もある。

「…コレ、由月が研究しているの?」

「ああ。昔の資料とか出してさ、まとめてみたんだ」

「ふぅん。分かりやすいし、良いと思うよ」

「そっか。それでオレ、温泉や金を探してみようかと思うんだ」

「へぇ…って、はい?」

思わぬ言葉に、思わず眼が丸くなる。

「探すって…温泉や金? でも取り尽してしまったんじゃ…」

「でもアレから何十年も経っているし、まだ探していない所も多いんだ。地質によっては、また金や温泉が出る所があるかもしれない」

「そうかもだけど…お金持ちになりたいの?」

後継者にはなりたくないことは知っている。

だから考えつくことなんて、それぐらいしかない。

「まあな。金があれば、雅貴を養えるだろう?」

「あっ」

五年前に由月が言っていたことか。

「でっでも本当に出るとは限らないんだろう?」