「…バカ。そんなのオレだって同じだ」

ぎゅっと抱き締められると、思わず苦笑する。

こういうところは変わっていない。

「そう言えば後継者問題、解決しそうなんだって?」

「ああ、二番目の姉貴が頑張ってるからな。親父もそろそろ疲れたんだろう」

「由月も頑張っただろう? 12年間も引きこもり続けたんだから」

「最初は意地だったんだけどな。いつの間にか、コレが当たり前になってた」

本人も驚いているらしい。

「まあ引きこもっていたおかげで、2人っきりでいられる時間が多かったわけだし? 僕にとってはラッキーだったんだけどね」

「言ってろ」

クスクス笑いながら、何度もキスをする。

僕の手が、浴衣の合わせ目から彼の肌を撫でる。

肌触りも変わっていない。

由月の手も、僕の着ているTシャツの下からもぐりこみ、背中を撫でる。

「相変わらず男とは思えない手触りだよな。妹だって、こんなにスベスベしていないぞ?」

「都会人だからね。でもこれからは分からないだろう?」

「雅貴は変わらない気がするけどな」

僕の背中を撫でる手が、ふと止まった。

「あっ、忘れてた。大事なことがあったんだ」