「…勝手にすれば?」

「うっうん、ありがとう」

僕は恐る恐る襖を開けた。

中は思った以上に広かった。

二十畳はあるんじゃないだろうか?

部屋は本棚がいっぱいで、難しそうな本がたくさんあった。

「スゴイ本の量だね? コレ全部、由月が…」

「オレが集めるワケないじゃん。祖父さんのだよ」

「あっ、そっか」

「ここは祖父さんの書斎を改造した部屋なんだ。オレの自室用に」

「へ? でも部屋ならいっぱいあるよね?」

「あるけど…ここが一番落ち着く」

この部屋は玄関から一番遠くて、窓から見る景色も中庭に面している。

静かで、あんなにいた人の気配がここにはない。

「確かに静かだね。でも静か過ぎて、僕には怖いな」

「別に完全な沈黙はないよ。耳を澄ませば風の音や虫の声、川の音が響いてくるし。普段はパソコンやテレビ、ラジオの音が響いているしね」

確かに今もテレビとパソコンがつけられている。

でも音は小さ過ぎて、僕達の声の方が大きいぐらいだ。

由月はこんな部屋に1人でいるんだ。

そう思うと少し胸が苦しくなった。