「ほら、だから雅貴くんを許してあげなさいな。紛らわしい格好をしているあなたもあなたなんだから」

伯母に言われ、由月は渋々手を離した。

けれどすぐに踵を返し、廊下を走り去ってしまった。

「あっ、由月!」

追いかけようと思ったけれど、あっと言う間に姿は見えなくなった。

「雅貴くん、気にしないでね? あの子、はじめて会う人には必ずと言って良いほど女の子に間違われちゃうのよ」

「…伯母さん、せめて浴衣は寝る時とお祭りの時だけ着せた方がいいのでは?」

「でも本人が普段着として気に入っちゃってて…。わたしもつい縫っちゃうから、悪いんでしょうけどね」

伯母は苦笑しながら、冷たい麦茶を淹れてくれた。

「まあ外見のせいもあるでしょうけど、ちょっとからかわれやすいみたいでね。学校でも浮いているみたいで…」

「ああ、何だか思い浮かべます」

「ええ。それでわたし達家族にもあんまり口を利いてくれないどころか、最近では1人で閉じこもってばっかりでね。心配してたのよ」

確かにどことなく、暗い雰囲気があったな。

「だから雅貴くんと一緒にいるところを見た時は安心したわぁ。どうやら気に入ったみたいね、雅貴くんのことを」