「おいおい、泣く事はないだろ? 大袈裟だなあ…」

「だって…」

とうとう堪えきれなくなり、涙がぽろぽろ零れだしてしまった。

「会いたけりゃ、会いに来ればいいだろ?」

「え?」

私は顔を上げて桂木君を見上げた。
今言われた桂木君の言葉の意味が、なかなか頭に入って行かない。

私が無言で桂木君を見上げていたら、「何、固まってんだよ?」と言われた。

「会いに来るって…どこに?」

「俺ん家に決まってんだろ?」

「私が、桂木君の家に?」

「ああ。嫌ならいいけど」

嫌とか嫌じゃないとかじゃなく、学校一の人気者の桂木君の家に、私なんかがお邪魔する、という状況を全く想像出来なかった。