「じゃあ今度こそ消毒するから、手を出してくれる?」

桂木君に右手を差し出すと、「指を持ってもいいかな?」と聞かれた。

内心では桂木君に触られたくなかったけど、そんな態度ばかりしてると嫌な女と思われそうで、コクンと私は頷いた。

桂木君は遠慮がちに私の指を摘むようにして持った。

私はそれだけでも恥ずかしくて、たぶん赤い顔をしていると思うので、桂木君になるべく見られないように下を向いた。

消毒液の臭いがして、私は咄嗟に子供の頃に消毒液がすごく沁みて泣いた事を思い出した。

そして思わず「ちょっと待って!」と叫んでいた。