正確にはバッグにではなく、子猫にだった。

「君、可愛い顔してずいぶん乱暴ね?」

「仕方ないんだよ」

「え?」

女子はきょとんとした顔で俺を振り向いた。

「子猫ってさ、まだ爪を引っ込めるのが下手なんだ。というか、そうやって自分の身を守るのかな。だから爪先をちょっと切るといいんだけどな」

「そうなの? 詳しいのね?」

「家には猫が5匹もいるからね」

「え〜!? 5匹も? いいなあ…」

「そうか? 消毒するから、手を出して?」

俺がそう言うと、女子はおずおずと右手を俺に差し出した。

白くて小さい手の甲に、場違いな感じで赤いミミズ腫れが出来ていた。血はもう止まっていたが。