桂木君は子猫に怒った様子もなく、逆に「大人しく入ってろよ?」と優しい声を掛けていた。

「さあ、早く行こう。バッグ持とうか?」

「え? ううん、大丈夫」

男の子からバッグを持つなんて言われた事のない私はドギマギしてしまった。
桂木君のこういう所に女の子は弱いのかなあ…

桂木君の後に付いて校舎に向かっていると、すれ違う生徒が男女を問わず、みんな桂木君に声を掛けて行く。
桂木君の人気の高さを改めて実感させられた。

それとは対照的に、彼の後ろをトボトボ歩く私には、みな怪訝な視線を送って来た。

特に女子からは、「何よ、この女。なぜ琢磨様に付いて歩いてるのよ?」と、その視線が言っている気がして、私は俯き気味になるほかなかった。