その時、「痛え…」と彼が顔をしかめたので、彼の指先を見ると、私と同じく子猫の爪で引っ掻いたらしく、人差し指に出来た引っ掻き傷から、血が滲み出ていた。

「大丈夫?」と私が声を掛けると、「ちょこっとだから、大丈夫」と言った。

私と同じ傷を桂木君も負った事が面白い、というか嬉しいというか、自分でもよく分からない感情から、「あなたも消毒しなくちゃね?」と私は言っていた。

でも桂木君は、「いや、これで十分」と言い、指をペロッと舐め、にっこり微笑んだ。

その瞬間、なぜか私の胸がドキンと跳ねた。